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皮膚血管炎/血行障害 CUTANEOUS-VASCULITIS

皮膚血管炎とは

血管炎とは、その名の通り血管に炎症が起きている状態を言います。これによって、血流が狭窄して虚血状態になるほか、出血の症状がみられることもあります。そして様々な症状がみられるようになります。皮膚症状もそのひとつです。血管炎は、障害を受けている血管の大きさから大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎(免疫複合体性小型血管炎、ANCA関連血管炎)に分類されますが、皮膚血管炎は、中型血管炎や小型血管炎のことを意味します。なお炎症の原因に関しては、現時点で特定されていませんが、免疫異常が関係しているのではないかと言われています。

血行障害とは

血行障害とは、常に体内を循環している血液の流れがスムーズではなく、それによって何らかの異常がみられている状態をいいます。なお血行障害の原因はひとつではなく、体の冷えをはじめ、長年の末梢血管の動脈硬化、運動不足や水分不足、きつい靴を履く、締めつけの強い服を着ることによる圧迫で起きることもあります。また血管系の病気に罹患している、ストレス等による自律神経の乱れが原因ということもあります。

主な皮膚血管炎

結節性多発動脈炎

結節性多発動脈炎とは

中型~小型の太さとされる動脈の血管壁に炎症が引き起こされます。これによって、動脈壁が破壊されるなどして血管が肥厚化するなどして狭窄、血流が悪化することで、様々な臓器障害や皮膚症状がみられるようになります。

主な症状ですが、全身症状として発熱や体重減少がみられるようになります。さらに炎症の影響によって、倦怠感、頭痛、関節の痛みや筋肉痛、筋力低下などがみられます。また消化管に関係する血管に障害が起きれば、腹痛、嘔吐、下血などの症状が出ることもあります。

このほか皮膚症状としては、手足に紫斑、皮下結節(赤いしこりで圧痛もみられる)、皮膚が潰瘍を引き起こすほか、手足の指が壊死することもあります。

しかし、多くの症例は皮膚に限局する皮膚型結節性多発動脈炎(皮膚動脈炎)であり、末梢神経炎を伴うことが多いですが、腎臓などの内臓病変は見られません。

治療について

完治させるのは難しいので寛解(症状が治まった状態)を目指していきます。この場合、寛解に向けた治療(寛解導入療法)と寛解を維持していく治療(寛解維持療法)があります。

寛解導入療法では、ステロイド薬を用いた高用量ステロイドの内服やステロイドパルス療法を行います。上記以外の治療法としては、免疫抑制薬を投与することもあります。また寛解維持療法に関しては、主に低用量ステロイドの内服を続けていきます。

このほかにも、症状が強く出ている場合は、それに対する対症療法も行います。 一方、比較的軽症である皮膚型結節性多発動脈炎(皮膚動脈炎)の場合は低用量ステロイドと抗血小板凝集剤や血管拡張剤の併用、更に弾性ストッキングの着用で治療します。

クリオグロブリン血症性血管炎

クリオグロブリン血症性血管炎とは

クリオグロブリンと呼ばれる特殊なたんぱく質が血液中に増加し、それによってアレルギー反応を引き起こすなどして血管炎が発生している状態がクリオグロブリン血症性血管炎です。上記以外にもC型肝炎や膠原病の罹患がきっかけとなることもあります。いずれにしても小型血管に炎症がみられるのが特徴です。

主な症状ですが、関節の腫れや痛み、手足の感覚が鈍くなるほか、腎臓に障害がみられることもあります。皮膚症状では、レイノー現象(手足の指先が白や紫色になる)、網状皮斑(赤や紫の色をした網目模様の皮疹)、紫斑、潰瘍などがみられるようになります。

治療に関してですが、主に手の部分を冷えないように努める環境づくりに努めます(寒冷刺激を防ぐ)。また何らかの疾患によって引き起こされているのであれば、その治療を行います。重度な症状がみられている場合は、ステロイド薬の投与、免疫抑制薬などを使用していきます。

IgA血管炎

IgA血管炎とは

小型血管に炎症が起きる血管炎です。アレルギー反応によって引き起こされるとされ、IgAと呼ばれる抗体が関係しているとされています。発症にあたっては、細菌やウイルス等による上気道感染をきっかけとして、1~3週間後に血管炎の症状が現れるようになります。感染によって免疫反応が刺激されることで起きるのではないかと考えられていますが、現時点では特定されていません。

主な症状ですが、皮膚症状では、触って確認することができる紫斑がみられます。足のすねの部分の前側に発生することが多いですが、膝や足の甲、臀部、顔などでもみられます。上記以外にも、腹痛、嘔吐、血便などの消化器症状がみられるほか、関節に痛みや腫れ(一過性で変形はしない)、尿検査で血尿や蛋白尿が陽性となるなどの症状もみられます。

小児で発症した場合は、これといった治療をしなくても症状が治まっていくので経過観察することもあります。人によっては対症療法を行うこともあります。なお成人で発症した場合は、腎障害のリスクが高く、重症化しやすくなることから治療を行います。例えば、関節の痛みに関してはNSAIDs、消化管や腎臓に何らかの障害がみられている場合は、ステロイドの内服薬や免疫抑制薬などの治療薬を使用します。

蕁麻疹様血管炎

蕁麻疹様血管炎とは

蕁麻疹でみられる皮疹によく似た皮膚症状(紅斑、丘疹 等)がみられる小型血管炎です。ただ蕁麻疹のように24時間以内に消えることはなく、長期間持続します。また皮疹が消失したとしても色素沈着がみられるようになります。上記以外の皮疹としては、血管炎を引き起こしたことによる紫斑のほか、血管性浮腫も現れるようになります。

原因に関しては、何かしらの基礎疾患があって発症する続発性のケースと原因が特定できない特発性に分けられます。続発性の場合、B型・C型のウイルス性肝炎、膠原病(全身性エリテマトーデス 等)などに罹患していることがきっかけとなります。

また蕁麻疹様血管炎は大きく2つのタイプに分類されます。ひとつは血液中に含まれる補体(タンパク質)の低下もみられる低補体血症性蕁麻疹様血管炎(HUV)です。もうひとつは、補体の低下がみられない正補体血症性蕁麻疹様血管炎(NUV)です。これは補体に含まれるC1q対する抗体が関係しているとされていることから抗C1q血管炎と呼ばれることもあります。なおHUVについては、臓器障害として、腎臓や肺などに障害がみられ、関節の痛みも伴います。NUVに関しては、上記の症状が出ることは少ないとされています。

治療に関してですが、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やコルヒチンなどが用いられます。また臓器障害がある場合は、ステロイドの内服薬や免疫抑制薬を使用していきます。

ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

ANCA関連血管炎とは

ANCAは自己抗体のひとつです。通常であれば抗体というのは、侵入してきた異物(細菌、ウイルス等)を排除する働きをするのですが、何らかの病原体の感染等をきっかけに好中球を攻撃することがあります。これによって好中球が過剰に活性化するなどして、血管炎が起きている状態がANCA関連血管炎です。

同血管炎は、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の3種類に分けられますが、欧米と比べ日本には好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の患者が多い一方、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)が少ないのが特徴です。

ANCA関連血管炎の特徴として、発熱、倦怠感、疲れやすい、体重減少などの非特異的な全身症状がみられます。皮膚症状としては、紫斑は最も多く、皮下結節、潰瘍、網状皮斑なども主に足で見受けられるようになります。それぞれの血管炎の主な症状は以下の通りです。

顕微鏡的多発血管炎では、肺で肺胞出血や間質性肺炎が起きやすく、息切れや痰が絡まない咳、血痰などがみられます。腎臓では、半月体形成性壊死性糸球体腎炎を発症し、たんぱく尿や血尿が現れるほか、腎機能が低下していきます。

多発血管炎性肉芽腫症では、眼症状(眼球突出、視力低下、目の痛み 等)、難聴や中耳炎等の耳症状、黄色でドロドロした鼻水(膿性鼻漏)や鞍鼻(鼻がへこむ)等の鼻症状、声がかすれる(嗄声)など、上気道で様々な症状がみられます。肺では、血痰、咳、息苦しい等の症状のほか、顕微鏡的多発血管炎と同様の腎症状も現れます。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、比較的女性の患者が多いです(男女比は1:2)。発症間もない時期では、副鼻腔炎や鼻茸、成人発症の気管支喘息等の症状が現れます。腎症状が出ることは少ないですが、神経症状(多発性単神経炎)として、手足など体に力が入らない、しびれ、ピリピリする痛みなどが約75%の患者にみられ、約60%に皮膚症状がみられます。

治療に関してですが、治癒させることは難しいので寛解(症状がほぼ出ない状態にする)を目指していきます。寛解導入期の治療としては、症状の程度に応じた量のステロイド薬の内服、ステロイドパルス療法、免疫抑制薬(シクロフォスファミド、メトトレキサート 等)などが用いられます。また寛解を維持していくための治療としては、低用量のステロイド薬のほか、医師が判断した場合に免疫抑制薬が併用されることがあります。

リベド血管症

リベド血管症とは

真皮層にある血管(小血管)の血液の循環が主に血栓の発生によってスムーズでなくなることで起きるとされています。それによってマスクメロンに似た網目状の赤紫色の斑(網状皮斑)や潰瘍、紫斑、白色委縮などの皮膚症状が両足でみられるようになります。

自覚症状として痛みも現れ、ひどい状態になると慢性的な血流不足によって壊死が起きることもあります。発症率は10万人に1人の割合で稀な難病ですが、女性患者が多く、比較的若年世代に起きやすいです。

現時点で確立された治療法というのはありません。血行不良を改善させるための治療(対症療法)として、抗血小板薬、抗凝固薬、血管拡張薬などによる薬物療法及び、弾性ストッキングの着用が行われます。